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皆さん、こんにちは。学びの庭・塾長の柳です。
寒いですね。先日、ここ信州・小諸では、風花が舞っていました。
明るい陽射しのなか、きらきらと舞う雪の花びらは、何かとても不思議なものに見えました。
さて、今回もチャイコフスキーの交響曲第6番『悲愴』について語ろうかと思います。
というのも、……
以前の塾長日記(2023/12/05)でも少し触れたのですが、塾長はチャイコフスキーのこの交響曲をこんな風にとらえて聴いています。
①第1楽章中間部の柔らかな旋律(第2主題)
↓ 変 貌
②第4楽章冒頭の悲痛な旋律
ところが、このとらえかたを周囲の人たちに語ったところ、「ちょっと無理があるんじゃない?」と言われてしまいました。
いいえ。塾長からすれば、全くそんなことはありません。
そこで、これら2つの対照的な旋律が同根のものであるという根拠(エヴィデンス*1)をここに挙げておこうと思います。
*1 塾長は「エヴィデンス? そんなものネーよ!」などと言ってのけてしまうどこかの新聞の記者とは違うのです。楽譜の引用をせずに話を進めるのはかなり強引なのですが、どうにか(?)やってみます。
まずは、第1楽章第2主題のメロディー。
「(ウン)ファ♯ミレ」とたっぷりゆったり惹起しておいて、
「シラファ♯ラレーシラー」と続き、
さらに繰り返して、
「(ウン)ファ♯ミレ」の次に、より深く、
「ラファ♯レファ♯シーララー」と落ち着いてゆく旋律(二長調*2)。
次に、第4楽章冒頭のメロディー。
小節の頭から急転直下、
「ファ♯ーミレ」と劈(つんざ)くように冷たく響かせて、
「ド♯ーシド♯ー」と不安定に、まるで嗚咽を洩らすかのように揺蕩(たゆた)う旋律(ロ短調*2)。
それに呼応して、
「ファ♯ー」と鹿の遠音が鳴り響く。
これが繰り返されるときは、
「ファ♯ーミレ」のあと、旋律は
「ド♯ーシレド♯ー」とさらに揺れます。
そしてまた、
「ファ♯ー」と鹿の遠音。
いかがでしょうか。これらのメロディーは、どちらも「ファ♯、ミ、レ」に続く一連のパッセージという点で、相同するものといえるのではないでしょうか。
「いや、そんなの偶然でしょ」などという人がいたとしたら、それは残念ながら違うでしょうと申し上げなければなりません。といいますのも、塾長はさらにもう一つ、論より証拠(evidence over theory)を摑んでいるからです。それは第2楽章の中間部です。
そこでは、弦(第1ヴァイオリンとチェロ)が、
ファ♯ーファ♯ファ♯ーミ、
レーレレード♯、
シーシレード♯、
シーシソーファ♯
と微妙に揺れ動く不安定なワルツを繰り返し奏でています(ロ短調*2)。
ここも、「ファ♯、ミ、レ」の動きです。
*2 第1楽章全体はロ短調。第2主題はニ長調。第4楽章全体はロ短調。第2楽章全体はニ長調。このパッセージはロ短調。
このように、すべては連関して響き合っています。決して偶然などではないのです。
ぜひ皆さんも、こうした関連性や対照性を感じながら、いま一度チャイコフスキーの交響曲第6番『悲愴』を聴いてみてください。
その上で、ご納得いただければ、何よりです。