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皆さん、こんにちは。学びの庭・塾長の柳です。
新年あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
昨年末の紅白も、新年元日のニューイヤーコンサートも、異例の無観客でのパフォーマンスとなりました。にもかかわらず、それらのクオリティの高さは素晴らしいものでしたね。
さて、新年初の塾長日記は、音楽を中心に創造とはどういったものなのかを追究した本、大黒達也『芸術的創造はどこから産まれるか?』(光文社新書)から、学習面に関して塾生や保護者様にも役に立つところを共有できればと思います。
「学びの庭」は、塾生が《学力向上を通して創造的主体となる》ことを念頭に置いておりますので、この本には多くのヒントがありそうです。
著者はケンブリッジ大学で神経科学を専門に研究をしている学者ゆえ、脳の働きなどから創造というものを解きほぐそうとします。脳科学の詳細は省きますが、彼によると、《創造的思考力》とは、次の二つのせめぎあいの中にあるとのことです。塾長なりに整理してみました。
《創造的思考力》
【拡散的思考】
創造性、新規性、意外性、内発的意欲、不確かな現象への興味、偶発的、直観的、潜在的、独自のエピソード、感性、音楽では自由な即興演奏
【収束的思考】
知能、最適化、モデル化、外来的意欲、確かな現象への興味、意図的、論理的、顕在的、予測化、理性、音楽では楽譜通りの精密な演奏
著者は、創造性の発揮には、前者だけではなく、両者とも重要だということを重ねて強調しています。
そして、創造性を発揮しやすい生活習慣として、「マインド・ワンダリング」「あらゆる人や事柄を受け入れる気持ち」「自己否定をしないこと(自信、野心)」「内発的報酬(知的な報酬)を得たい気持ち」「厳しい教育(努力、苦労をさせる)と、やりたいことを大いにやらせる(チャレンジできる)環境」「繊細さ(感受性の高さ)」「内発的モチベーション」「知的好奇心」「自分の思考を観察・制御する(メタ認識的なモニタリング)能力」などなど、様々なことを挙げています。
より具体的には、「散歩」や「睡眠」の効用も。
教育界でもしばしば取り上げられる「フィンランド・メソッド」や「アクティヴ・ラーニング」についても語られています。考えを一度あたためる(インキュベイトする)ことなどは、『思考の整理学』で有名な外山滋比古にも通じますし、ブレインストーミングなどによるクリエイティヴィティの発揮に関しては、イノベーション・エンジンでも有名なスタンフォード大のティナ・シーリグにも通じます。年齢別の学習法や言語習得に関しての、「タグ付け(プルースト現象)」「翻訳しない」「孤独は学習の敵」なども、興味深い内容です。
…結局、塾長がこの本から得たのは、「拡散(はみ出す部分、チャレンジする部分、=自分の外へ)」と「収束(おさめる部分、まとめる部分、=自分の内へ)」の両者をバランスよく発揮することが大切なのだということでした。
翻って塾生たちを見ていると、まだまだ「受動的」「他者依存的」「指示待ち」「無口、無反応、自分の思考・感情を言語化しない」「こじんまりと収まろうとする」「高望みをしない」「低い楽しみや喜びで満足する」「深く考えないで、点数だけを伸ばそうとする(←これは、無理筋ですよ)」…そんな傾向を感じます。拡散する部分が圧倒的に足りないのに、安易に収束しようとしてしまうきらいがある、ということです。齢を重ねてしまった者から見れば、若いのにもったいない、と思えて仕方がありません。(自分が学生だった頃にはそれはそれで違う考えがあったのは間違いありませんが…。)
新年早々、お小言で終わってはいけませんね。
受験生は、本番直前。未来の受験生も含め、拡散と収束のバランスよい発揮で、自分を高め、世のため人のためになるよう、ベストを尽くしていきましょう。塾長もその強力なアシストができればと思っています。
渋沢栄一が、良いことを言っています。曰く、「だれかに何かをしてもらうことを考えるのではなく、今の自分なら何ができるかを考えることが大切である。」
生徒さん・学生さんは、未熟なのですから、ものごとを独りで解決しようとしてはいけません。(それは不遜・無謀というものです。) 周囲の意見を聞きながら、周囲の助けも借りながら、自分にできる最善を考えて行動すること。それが、自分も、周囲も、世の中全体も、幸せにする秘訣なのでしょうね。あなたたちの“周囲”である、学校も、塾も、親も、しっかりしなければいけません。
困難な状況ではありますが、誰にとっても飛躍の年となることを願っています。