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皆さん、こんにちは。学びの庭・塾長の柳です。
とある、本を紹介する番組で、紹介されていた、こんな小説の一節。
春[人物名]はくるりと背を向け、
スタスタと歩いていく。
四人はその背中をじっと見つめている。
その背中が遠ざかり、人ごみに吸い込まれる、
と思った瞬間、彼はピタリと足を止めた。
とあるベストセラー作家の文章なのですが、いかがでしょうか。
常套句でしかない、オノマトペや副詞句。
比喩の一つもない、読みやす過ぎて、面白くも何ともない(つまらない)文章。
個性のない、透明すぎる文体(悪い意味で言っています)。……
要するに、
どんな(審美眼がない)人にでも読めること、
リーダビリティーの高さ(読みやすさ)などというのも烏滸がましいレベルの、
識字できる人全員が意味を理解可能なレベルにまで、語彙や表現のレベルを下げて下げて下げて下げて、独自の表現を目指さないことこそが、
ベストセラーになるコツなのでしょうか。
これだけ「個性」「個性」と声高に言われる時代に合って、こんなにも個性のない文章を多くの人たちは読みたがる。
本好きが見るであろう本紹介の番組ですらこの始末です。
悲しすぎます。
忙しい現在、限られた時間の中で、どうせなら、より濃やかな語彙や表現で紡がれた文章を味わいたいものです。
塾長はこの作家のことはよく知りませんが、内心、どのように感じているのでしょうか。
もう、その部分に関して個性的であろうとすることは諦めてしまっているのでしょうか。
良い読者がいてこそ、良い作家が育つのです。
塾生の皆さんは、読みやすいだけでなく、多少読みづらくても、自分の世界観を(語彙や表現のレベルでも)広げてくれる読書をしていけるといいですね。