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国語「少年の日の思い出」

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皆さん、こんにちは。学びの庭・塾長の柳です。

 

昨日、小諸東中学校の3学期期末テストが無事終了しました。

中学生の国語でヘルマン・ヘッセ「少年の日の思い出」の読解問題を指導しましたので、そのことについてお話をいたします。(長く光村図書の国語教科書に採用されてきた短編ですので、親御さんたちのなかにも懐かしく思い出される方がいらっしゃるのではないでしょうか。そんなときは、ぜひ、お子さんとこうした話題でコミュニケーションをとってください。)

さて、学習塾「学びの庭」では、中学校の授業の流れを受けて、定期テスト対策になるように、再確認やさらなる読解をおこないました。

そんななかで確認できたことですが、中学校のとあるクラスの国語授業では、こんな試みがなされていました。この物語の末尾をとりあげて、「なぜ『僕』は最後に自分の蝶をこなごなにつぶしてしまったのか」という問題設定をして、生徒さん一人ひとりに自由に記述をしてもらっていました。それを学校の先生が一枚のプリントにして印刷していたので、塾生伝いに見せてもらったのですが、これが塾長にはたいへんに興味深かったです。

といいますのも、まず、かなりの人数の生徒さんたちが、ほとんど全く読解できていなかったからです。と同時に、とても鋭い指摘をしている生徒さんもまた、数名見受けられました。

プリントでは、大きく①《怒り》②《償い》③《後悔》④《その他》に分類されていましたので、一つひとつ見ていきましょう。

① まず、《怒り》。エーミールにいろいろ言われて「腹が立ったから」「むしゃくしゃしたから」「むかついたから」などの意見は、論外ですね。短絡的な自己の感情だけで他者の心情を判断していて、まったく登場人物の細やかな感情を読み取れていません。「忘れたいから」「思い出したくないから」「かかわりあいたくないから」なども、同様です。国語の読解としては、完全な、不正解です。(生徒さんは、“おふざけ”で書いたのかな?)

② 次に《償い》。「せめてもの償いに自分の蝶をつぶした」というのも、残念ながら、不正解です。本文中にあるように 、『僕』は、「一度起きたことは、もう償いのできないものだということを悟った」のです。もはや償いは不可能なのです。ですから、これも不正解です。

③ では、《後悔》。これはどうでしょうか。たしかに、この気持ちは当然『僕』のなかにはあったことでしょう。「なんであんなことをしてしまったのだろうと悔やんだ」「自分が嫌だった」「僕は最低な奴だ」は、感情としては正しいです。しかし、そうした感情を抱くことと、自分の蝶をつぶすという行為の間には、論理的なつながりがありません。「後悔・自己嫌悪」→「蝶をつぶす」の間には、合理的な説明がなされていません。ですから、これも、問いの答えとしては、不正解です。後悔して、さらにどう思った(考えた)から、蝶をつぶしたのかを、答えなければいけません。

④ ということは、正解は、《その他》にしかないことになります。

どのようなことが考えられるでしょうか。《その他》のものとして、鋭い生徒さんの意見がいくつかありました。塾長が分類した限り、大きく二つに分かれます。

一つ目は、《自罰》です。「自分を責めて」「自分への反省として」「せめて自分で自分を罰しようと思って」。これはありうることです。他者への償いは不可能ですが、自分を罰することは、大切な蝶をつぶすことで可能です。

二つ目は、《資格が無い》です。「もう自分は蝶を持っている資格がないと思ったから」「こんな事件を引き起こしてしまった自分が、これから先、蝶を持ち続けるわけにはいかないと思ったから」などは、かなり登場人物の心情に肉薄しているように思います。

“蝶”という宝物を持ち続けることが自分には許されないと悟った『僕』は、もしかしたらエデンの園から追放されたアダムのような気持ちになっていたかもしれません。こうした罪の意識を背負いつつ生きていくという感覚は、深く西洋文明(キリスト教文明)に根づいた感情とも結びついていると言えることでしょう。

 

…さて、話を塾の学習レベルまで引き戻しておきましょう。実際、今回の定期テストでも、バッチリ、「一度起きたことは、もう償いのできないものだ」というところが、記述式の配点の高い問題として出題されていました。塾の指導で、そこに着目させることができていましたので、きちんと取り組んでいた塾生は、早速、「塾でやったところが出たよ!」と言ってくれました。塾長としても、嬉しい限りです。

 

 

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